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能楽は日本の伝統芸術の一つで、2022年に世界無形文化遺産保護名簿に登録されました。現在の能楽公演は、「能」と「狂言」の二つの形式で構成され、同じ舞台で上演されます。「能」は宗教的な儀式を伴う歌舞劇であり、「狂言」は笑いを誘う短編劇です。
「能」の起源と発展
「能」は、中国唐代から伝わった民間芸術から発展し、日本の伝統芸能と結びついて平安時代に猿楽として形成されました。室町時代には、猿楽は「能」と「狂言」に分かれました。この時代の観阿弥は、各地の猿楽の優れた要素を取り入れ、能の歌舞音楽の表現力を強化しました。観阿弥の子、世阿弥は能の舞台芸術性を高め、『風姿花伝』を著しました。明治時代から「能」と「狂言」は同じ舞台で上演されるようになり、能楽と総称されました。能の流派には観世、金春、宝生、金剛などがあります。江戸時代には、能の中心が京都から江戸に移りましたが、金剛流や観世流の宗家は京都に留まりました。
「能」の表演について
能の主役はすべて男性であり、女性役も男性が演じます。主役は踊りを中心に演じ、対役の配役は通常成人男性が担当します。主役は面をつけて演じることが多く、配役は面をつけません。衣装は非常に厳格に規定されており、豪華で美しい衣装が役ごとに異なる色や着方で配置されます。
「能」の面について
能の面は能楽公演の重要な道具であり、役によって異なる面が使用されます。面は檜で彫られ、60種類以上あります。代表的な面には、健康と長寿を象徴する「翁面」、若く美しい女性を表す「小面」、天狗を代表する「鬼面」、漁夫や樵夫、船夫を表す「尉面」などがあります。
「狂言」について
狂言は、能の上演の合間に挿入される短編劇で、観客の疲労を和らげる役割を果たします。狂言は口語形式で現実生活をユーモラスに演じ、場の雰囲気を盛り上げます。狂言の役には太郎冠者、主人、僧侶、女性などがあり、神鬼動物老人を除いて面をつけません。江戸時代には、狂言は独自の劇種として発展しました。
能楽の舞台
能楽の舞台には松の木、鏡板、橋掛、揚幕、岚窗、台階などの要素があります。松の木は奈良春日大社の神明の化身とされています。橋掛の外沿には松の木が三本植えられ、舞台の定点となっています。「鏡板」は主舞台の後方に位置し、松の木が描かれた木製の平板です。「橋掛」は主舞台と廊下をつなぐ位置にあり、俳優が進出する通路であると同時に演技空間の一部でもあります。「揚幕」は鏡板と橋掛の間に掛けられた五色の幕で、俳優が舞台に出入りする際に使います。「岚窗」は揚幕の左側の方格窓です。台階は舞台中央の木製の階段で、古くは演出の開始を告げるために使われました。
能楽と狂言は同じ舞台を使用し、専用劇場では屋根付きの舞台と観客席が設けられています。
代表的な劇目「鉢の木」
この物語は鎌倉時代に起こります。第五代執権北条時頼は執権の座を退き、僧侶として日本各地を旅して民情を視察していました。ある日、大雪の中、北条時頼はある家に宿を求めました。家の主人、常世は元御家人でしたが、親族に領地を奪われ、妻と共に困窮していました。常世は北条時頼をもてなすため、大切な盆栽を薪にして食事を用意しました。時頼は常世の忠誠心に感動し、帰還後、常世に領地を返還し、新たな領地も授けました。
小貼士
能楽をより楽しむためには、事前に能劇の物語や役柄を理解しておくと良いでしょう。公演中は、豪華な衣装や日本特有の歌唱、伴奏に使われる大鼓、小鼓、太鼓、笛の音色を楽しみながら、能楽の魅力を堪能してください。
公演情報
日本の能楽文化を体験したい場合は、各地の能楽公演のスケジュールを以下のウェブサイトで確認できます。